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2021.10.16

新イカ

 新イカをご存じでしょうか。日本でとれるイカの種類は80種類ほどあり、イカは日本国中どこでもいつでも取れて、その中の20種類が食されているそうです。それぞれに旬があり、有名な呼子の剣先イカは漁火漁が似合う盛夏の頃で、夏イカとも呼ばれています。今回は剣先イカの話ではなく、唐津で100年以上続く老舗の鮨屋の大将から聞いた甲イカ(墨イカ)の話です。

 春に誕生した甲イカの赤ちゃんが食されるほどに大きくなるのは7月下旬以降で、その頃になると鮨一貫のネタの大きさになるぐらいに成長します。その後はみるみる大きくなるので、これぐらいの大きさが新イカとしての食べ頃のようです。脚などと共に身を軽く茹でて、酢味噌で和えて出された一品が、今宵の主役です。

 女将から置かれた小鉢に箸を伸ばして口の中にもっていくと、ねっとりとしながらも歯ごたえのある食感と共に、イカの旨味と甘みが徐々に口の中に広がっていきます。人の好さそうで、多弁がちな恰幅の良い初老の大将から、これは唐津の晩夏から秋の風物詩になっていて、県外からこれを目当てに来る客も少なくないとの説明が、新たな調味料になります。相槌を打ちながら引き続きの料理の美味しさを味わうことが、こんなに楽しいものかと思いながら、コロナ以後では滅多にない時間を過ごしました。

 では、緊急事態宣言も明けた今宵、秋の夜長に皆様も一口いかがでしょうか。お酒好きの方には一献どうぞ。